アンティークコインの値段は、同じ種類・同じ年号のコインでも「状態」によって何倍も変わることがあります。その状態を表すのがグレードです。オークションのカタログや鑑定済みコインのケースには「MS65」「AU58」「VF30」といった表記が並んでいますが、はじめは何のことか分かりにくいものです。

この記事では、コイン収集を始めたばかりの方に向けて、グレードの基本的な読み方をまとめます。

結論:グレードは「アルファベット+1〜70の数字」で表す

先にポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 数字(1〜70):コインの状態の点数です。70がいちばん良く、1がいちばん悪い状態です。
  • アルファベット:状態の段階(MS、AU、VFなど)や、作り方の種類(プルーフ)を表します。
  • 60以上は未使用:60〜70は流通していない(使われていない)コイン、1〜58は流通して摩耗したコインです。

グレードの基準「シェルドン・スケール」

現在広く使われている1〜70の点数は、アメリカのウィリアム・シェルドン博士が1940年代の終わりに考案した「シェルドン・スケール」がもとになっています。もともとはアメリカの古い1セント銅貨の状態と価格を整理するために作られたものでした。

その後、1986年に鑑定会社のPCGSがこのスケールをもとにした基準で鑑定を始め、NGCなどほかの鑑定会社にも広がりました。今では、アメリカのコインだけでなく、世界のコインの鑑定にも使われています。

主なグレードの一覧

よく目にするグレードを、状態の悪い順に並べると次のようになります。日本のお店で使われる呼び方は、あくまで目安です。

表記数字状態のイメージ日本での呼び方(目安)
PO(Poor)1かろうじて種類が分かる程度まですり減っている―
FR(Fair)2大きく摩耗し、模様の多くが消えている―
AG(About Good)3年号などがなんとか読める―
G(Good)4〜6模様の輪郭は分かるが、細部はほとんど残っていない並品
VG(Very Good)8〜10全体に強い摩耗があるが、主な模様は見える並品
F(Fine)12〜15摩耗はあるが、模様がはっきり分かる並品〜美品
VF(Very Fine)20〜35高い部分に摩耗があるが、細部もよく残っている美品
EF / XF(Extremely Fine)40〜45摩耗はわずかで、細部までくっきりしている極美品
AU(About Uncirculated)50〜58いちばん高い部分にごくわずかな摩耗がある準未使用
MS(Mint State)60〜70流通による摩耗がない。数字は傷・光沢・見た目で決まる未使用

EFとXFはどちらも「Extremely Fine」の略で、意味は同じです。

未使用(MS)とプルーフ(PF / PR)の違い

MS(Mint State)は、使われずに残っている「未使用」のコインです。同じ未使用でも、製造や保管の途中でついた当たり傷、光沢(ラスター)の強さ、見た目の美しさによって60〜70に分かれます。MS70は、5倍程度の拡大でも傷が見当たらない、ほぼ完全な状態です。

プルーフは、状態の名前ではなく作り方の名前です。収集用に、磨いた型で丁寧に打ち出した鏡のような仕上げのコインを指します。プルーフのコインも1〜70で評価され、NGCでは「PF」、PCGSでは「PR」と表記されます。

数字以外によく出てくる表記

Details(ディテール)

洗浄(クリーニング)された跡、穴、大きな傷、腐食などの問題があるコインは、1〜70の数字をつけてもらえません。代わりに、「AU Details」のように「問題がなければこのくらいの状態」という段階と、問題の内容(例:Cleaned=洗浄あり)が書かれます。真贋(本物かどうか)は確認されていますが、同じ段階の通常のグレードのコインより評価は下がるのが一般的です。

★(スター)や+(プラス)

NGCでは、とくに見た目が美しいコインに★マークがつくことがあります。PCGSでは、同じ数字の中でも上位の状態のコインに「+」がつくことがあります(例:MS64+)。

銅貨の色の表記(RD・RB・BN)

銅貨は時間とともに赤い色から茶色に変化するため、色も評価の対象になります。RD(Red:赤)、RB(Red Brown:赤と茶色の中間)、BN(Brown:茶色)と表記され、一般にRDほど高く評価されます。

外国語の状態表記

ヨーロッパのオークションカタログでは、その国の言葉で状態が書かれていることがあります。たとえばドイツ語では「vz(vorzüglich)」がEF前後、「ss(sehr schön)」がVF前後、「stgl(Stempelglanz)」が未使用を表します。フランス語では「SUP」がEF前後、「TTB」がVF前後です。

グレードで価格が大きく変わる理由

高いグレードのコインほど、残っている数が少なくなります。とくに未使用(MS)の範囲では、1点違うだけで価格が大きく変わることも珍しくありません。鑑定会社は「そのグレードで何枚鑑定したか」というデータ(ポピュレーションレポート)も公開しており、上のグレードが少ないコインほど高値になりやすくなります。

自分で状態を見るときのポイント

  • 高い部分の摩耗:肖像の髪や頬、鷲の羽など、いちばん高く盛り上がった部分から先にすり減ります。
  • 光沢(ラスター):未使用のコインには、光を当てて傾けると表面を回るような光沢があります。洗浄されたコインは、この光沢が不自然になります。
  • 当たり傷やこすれ:目立つ場所(肖像の顔など)にある傷ほど、評価に大きく影響します。
  • 見る環境:1つの光源の下で、5〜10倍程度のルーペを使い、コインを少しずつ傾けながら見るのが基本です。

つまずきやすい点

  • グレードは鑑定会社の「意見」:同じコインでも、鑑定のたびに1点前後変わることがあります。
  • 同じ数字でも見た目は違う:色合いや傷の位置によって、同じグレードでも人気や価格に差が出ます。写真や実物で確かめましょう。
  • お店独自の表記に注意:「美品」「極美品」などの呼び方は、お店によって基準が少しずつ違います。気になる場合は、写真を追加で見せてもらいましょう。
  • Detailsの表記を見落とさない:数字がない鑑定ケースは、何らかの問題があるコインです。

まとめ

  • グレードは「アルファベット+1〜70の数字」で表す。
  • 60〜70は未使用、1〜58は流通品。
  • プルーフは状態ではなく作り方の名前。
  • Detailsは、問題があって数字がつかなかったコイン。
  • グレードは鑑定会社の意見なので、写真や実物でも確かめる。

グレードの読み方が分かると、オークションのカタログやお店の値札の見え方が変わってきます。まずは手元のコインや鑑定済みコインの写真を見比べて、目を慣らしていきましょう。

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※本記事はコイン収集の情報提供を目的としたもので、投資や売買を勧めるものではありません。グレードの基準や表記は鑑定会社によって異なる場合があるため、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。