鑑定済みのコインを見ていると、「MS65」「MS70」のように、MSから始まる表記をよく目にします。なんとなく「状態が良いコイン」という印象はあっても、数字の意味までは分からない、という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、MS(Mint State:ミントステート)とは何か、MS60〜MS70の数字がどう分かれているのか、初心者がつまずきやすい点はどこかを、鑑定会社の公開している基準をもとに整理します。

結論:MSは「流通による摩耗がないコイン」のグレード

先に結論をまとめます。

  • MSは「Mint State(ミントステート)」の略で、通常の流通用として作られたコインのうち、流通による摩耗(すり減り)がないものに付くグレードです。
  • 数字は60〜70の11段階で、数字が大きいほど、傷の少なさや打刻(模様の出方)、見た目の美しさが優れていると評価されます。
  • 「MS=傷ひとつない」という意味ではありません。MS60でも目立つ傷が多いことがあり、傷がほぼない状態を表すのは上位のグレードです。

グレード全体(使用済みのAU・XF・VFなどを含む)の読み方は、コインのグレード入門|MS・AU・VFなど状態表記の読み方で解説しています。この記事ではMSの部分を詳しく見ていきます。

MSの数字はどこから来ているのか

MSの数字は、1〜70の数字でコインの状態を表す「シェルドン・スケール」という尺度にもとづいています。米国のウィリアム・シェルドン氏が考案した尺度がもとになっており、鑑定会社NGC(Numismatic Guaranty Company)の説明によると、米国で1940年代後半から使われ始め、現在は国際的に広く用いられています。

この1〜70のうち、60以上が「未使用(Uncirculated)」の範囲です。NGCも、60を未使用とみなされる境目(threshold)と説明しています。59以下は、AU(About Uncirculated:ほぼ未使用)やXF(Extremely Fine:極美品)など、わずかでも摩耗があるコインのグレードになります。

なお、同じ60〜70の数字でも、記念品やコレクター向けに鏡のような地を持たせて特別に作られた「プルーフ貨」には、MSではなくPF(PR)という別の記号が使われます。MSは、あくまで流通用として作られたコイン(通常貨)のためのグレードです。

MS60からMS70まで:段階ごとの目安

鑑定会社PCGS(Professional Coin Grading Service)は、公式サイトで各グレードの目安を公開しています。要点を日本語でまとめると、次のようになります。

  • MS60〜62:摩耗はないものの、目立つ当たり傷(ほかのコインとぶつかってできる小さな傷)やヘアライン(細い線状の擦り傷)が多め。打刻が甘いこともあります。
  • MS63:傷の数や大きさは中程度。
  • MS64:傷は少なめ(または目立つ傷が少数)。打刻は平均以上が求められます。
  • MS65:細かい傷はあるものの、肖像など目に付きやすい部分(フォーカルエリア)には傷がなく、打刻も平均以上。
  • MS66:わずかな細かい傷がフォーカルエリア以外にある程度で、打刻も良好。
  • MS67〜69:「ほぼ製造されたままの状態」。67→68→69と進むにつれて、許される不完全さがさらに小さくなります。
  • MS70:製造されたままの状態で、打刻も完全なもの。

最上位のMS70について、NGCは「5倍の拡大で見ても、製造後にできた欠点がないコイン」と定義しています。肉眼で見て傷がないだけでは足りない、非常に厳しい基準だということが分かります。

評価の主な観点は、傷やヘアラインの量と位置、打刻の強さ、そしてアイアピール(見た目の美しさ、全体の印象)です。数字が1つ違うだけでも、こうした要素の総合評価が変わっていることになります。

MSの後ろに付く記号:「+」「★」「PL」など

スラブ(鑑定済みコインを封入したプラスチックケース)のラベルには、MSの数字の後ろに記号が付くことがあります。代表的なものを紹介します。

  • +(プラス):そのグレードの中でも上の方に位置するコインに付く表記です。NGCでは、XF45〜MS68(プルーフはPF45〜PF68)の範囲で付けられるとしています。
  • ★(スター):NGCが、特に優れたアイアピールを持つコインに付ける表記です。
  • PL(Prooflike:プルーフライク):通常貨でありながら、地の部分が鏡のように反射するコインに付く表記です。PCGSでは、反射がより強いものに「DM(Deep Mirror Prooflike:ディープミラープルーフライク)」という表記を使っています。

こうした記号の扱いは、鑑定会社ごとに細かく異なります。各社の特徴やスラブの読み方は、NGCとPCGSの違い 入門ガイド|鑑定会社とスラブの基本もあわせてご覧ください。

つまずきやすい点

MSのグレードについて、初心者が誤解しやすい点をまとめておきます。

  • お店の「未使用」とMSは同じではない:鑑定されていないコイン(いわゆる裸のコイン)に付いた「未使用」「完全未使用」は、販売者の判断による表現です。鑑定会社のMSグレードとは別のものとして考えましょう。
  • MS60=きれいとは限らない:摩耗がないことと、見た目がきれいなことは別です。MS60〜62は傷が多めのことがあるため、写真や実物で状態を確認することが大切です。
  • 鑑定会社が違えば基準も完全には同じではない:同じ「MS65」でも、鑑定会社が違えば評価の傾向が異なることがあります。ラベルの鑑定会社名もあわせて確認しましょう。
  • 数字だけで判断しない:グレードはあくまで状態の評価です。同じグレードでも、色調(トーン)や傷の位置で印象が大きく変わります。

まとめ

MS(Mint State)は、流通による摩耗がない通常貨に付くグレードで、MS60〜MS70の11段階に分かれています。

数字が大きいほど傷が少なく打刻やアイアピールが優れ、最上位のMS70は5倍の拡大でも欠点がない状態とされます。

ラベルの数字だけでなく、鑑定会社や記号、実際の見た目もあわせて確認する習慣をつけると、コイン選びがぐっと楽しくなります。

※本記事はコイン収集の情報提供を目的としたもので、投資や売買を勧めるものではありません。手数料や税金の条件は、各オークションハウスや公的機関の最新情報をご確認ください。